『R』は「円高不況時は技能工、採掘・製造・建設の職業及び労務の職業や運輸・通信の職業等のブルーカラーを中心に求人倍率の低下が大きかったのに対して、平成3年から4年にかけては、管理的職業従事者や事務従事者のホワイトカラーを中心とした低下が目立っている」と書いている。
これまでとの大きな違いを感じさせるのは「特に円高不況時には求人倍率が上昇していた管理職的職業従事者では4年の低下幅が最も大きい」と記述している点である。
経営者が不況を口実に、これまで先送りしてきた管理職の過剰問題を、ここで一気に出向、希望退職などで削ろうとしている面がないわけではない。
自分の責任を棚上げして、経営者はいい気なものだが、底流で起きている変化は軽視できない。
ピラミッド型の組織を前提とした管理職の仕事が本質的に失われつつある点である。
サラリーマンがこれからの職業人生を考える場合、大事なポイントだ。
ライン管理職がすべて消えるわけではない。
しかし課長、部長と昇るにつれて、第一線から遠ざかり、内向きのデスクワークに特化する従来型の管理職はかなり特殊なものとなるだろう。
コンピューターや通信機器などが安く大量に使えるようになって、企業の中の情報のやりとりは大きく変わりつつある。
これが管理職の仕事やあり方を根本的に変え始めている。
ワイン、ウイスキーなどを製造販売するMは92年夏からパソコン・ネットワークを導入することにより営業組織を革新した。
支社にいる第一線の営業マンと本社の営業推進室とをパソコン通信によって直結したのである。
これはピラミッド型組織の普通の情報伝達のやり方である。
上から次々と各段階の責任者に枝分かれしながら、末端まで伝えられていく。
下からの情報はこの逆をたどるわけだ。
下級管理職から順次、遡って支社長に集約されて、本社に伝えられる。
管理職は上からの指示を自分の裁量の範囲で解釈して部下への具体的な指示に変換する。
管理職の能力や性格によって、そのまま下に流してしまう人もいれば、自分なりのシナリオに書き換えて部下を動かす人もいる。
その辺のノウハウと任された部下をうまくまとめるかどうかが、中間管理職の腕の見せ所だった。
こうしたやり方は、業種、企業規模の違いはあっても、基本的に情報の流れは、それまでのピラミッド型からフラット型に一気に変わった。
中抜きになった支社長は何をしているのか。
中間管理職はすべて、管理者からプレーイング・マネージャーへの変身を迫られた。
92年は準備期間として93年から本格稼働させて、現在、S社長は「おかげで酒類の販売が全般に悪い中で、当社の売り上げは前年比6、7%のペースで伸びています」と、明るい表情を見せている。
改革する前は、本社の販売推進室が販売計画を立てて、13ある各支社長に通達する。
計画策定段階では、支社長の意見を聞くが、実行段階に入ると、本社から支社の営業マンに上意下達の形に。
支社長は支社全体の販売予算を管理職が率いる各担当に割り振り、順次、職制に従って下に正確なコミュニケーションが難しいから、構成メンバーは自然に守りの姿勢になり、硬直的になっていく。
上長は上の情報に接しられる点を権力の源泉にしている場合が少なくない。
支社長は本社と連絡を取る立場なので、支社全体の本社に対する窓口として支社内に影響力を持てる。
Mはこの構造をがらりと変えてしまったのである。
一人の管理職が何人まで部下をきちんと掌握できるか、自ずと管理限界がある。
このため、末端の人員が増えれば、それをまとめていく管理職の数が増え、そのまた上の管理職も多くなる。
こうして階層がいく層にもなって、最終的には大きなピラミッドになるわけだが、そこに宿命的とも言える問題が生まれる。
階層が増えれば増えるほど、情報伝達の時間がかかる上に、正確さも損なわれるという点である。
簡単な話で、子供達のゲームに、一列に並んで、次々と順番に耳にささやいて、話を伝える遊びがある。
最初と最後では、話がかなり違っていて全く別の話にすり変わっているのも珍しくない。
このゲームの面白さはそこにあるわけだが、企業では大変危険なこと「本社が考える人で販売計画を作り、営業マンはそれに従って手足を務めるというのでは面白くないでしょう。
今度は一線が自分で考えて自分の計画に従って営業活動をする。
命令されてやるより、自ら参加できるこの方が人間として幸せではないですか」。
S社長は狙いをこう語る。
各ユニットのチーフ役は6割から7割がこれまでの課長で、他は課長一歩手前の人をチーフにした。
こうして末端に権限をかなり移したが、当初、動揺したのはやはり支社長など中間管理職だった。
「おれたちは新体制ではいったいどのような仕事をするのか」という不安が覆った。
S社長にも不安があった。
「ある程度の混乱は予想しましたが、万が一、営業組織がバラバラになることはないだろうかと、心配しました」という。
さらに新体制への切り替えによって、新しい業務に適応できずに落ちこぼれる人が出ることを警戒した。
実際には、管理職はプレーイング・マネージャーとして今までの経験やノウハウを生かして現役復6人からなる百の小ユニットに分けて、それぞれにパソコンを持たせて、本社直結の情報システムを築いた。
本社販売推進室は、営業の最前線とパソコンネットで結ぶことにより、リアルタイムで販売状況などを知ることができる。
小ユニットは直接、本社と対話をしながら販売予算を作成することができる。
情報システムを駆使した小販売組織に移行してから、個々の営業マンの損益意識が高まったそうだ。
以前も、営業採算を支社長が管理していたはずなのだが、実際には「売上目標」がすべてに優先していた。
今度は、各ユニットを通じて営業マンが予算作りに直接参加する形になったほか、パソコンによって採算状況が容易につかめるので、自ずと採算を考えるようになったという。
では支社長の仕事と権限はどう変わったのか。
変わらないのは、これまで通り支社全体の経営責任を持っている点である。
また各ユニットの業績評価も支社長の仕事である。
この他、支社全体の共通事項に関する業務がある。
新しい仕事は、担当地域全体をカバーするような大手問屋や、コンビニエンスストアの本部などの大口取引先への販売である。
これらについては自分の予算を持って営業に歩く。
各ユニットは本社販売推進室と直接対話をするが、現場での各ユニット間の調整など、支社長が日常的に行う細かいマネジメントの巧拙が全体の営業成績をかなり左右するという。
支社長から各ユニットのチーフに至るまで、管理職の性格は相当に変わった。
今や販売予算の達成具合などの数字を見て、部下の尻をたたくようなタイプの管理職は失格である。
一緒に行動して、ともに考えながら指導する仕事の比重が増した。
こうして支社長の場合は、数字を管理する負担が軽くなり、市場に顔を向けて営業戦略を立案実行する仕事に、その分の精力を振り向けることが出来るようになった。
まだ新しい体制での仕事の評価をどのように改めていくかなど、課題はいくつもあるが、営業組織の姿勢が徐々に戦略志向に移りつつある。
市場の動きをどう読み、どのように対処していくかに焦点が合い始めている。
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